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東京高等裁判所 昭和35年(う)1670号 判決 1960年10月28日

被告人 二宮久子

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役六月に処する。

但し、本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予し、右期間中被告人を保護観察に付する。

理由

所論に鑑み、記録を精査し、当審の事実の取調の結果を総合し、被告人の年齢、経歴、家庭の事情その他諸般の状況について考えてみると、被告人は、昭和三十三年及び昭和三十四年中に三回にわたり、東京簡易裁判所で、売春防止法違反罪により各罰金刑に処せられ、昭和三十四年六月二十二日東京地方裁判所で、同罪により懲役四月執行猶予二年に処せられたにかかわらず、執行猶予期間中これらと同種の本件犯行に及んだという不利な事情もないわけではないが、他方、被告人の本件犯行は当時夫の二宮孝一の収入が少く、家族が多く、生活苦にあえいでいたので、家計を助け、夫と先妻との間の子供の衣料等を買つてやろうという動機からなされたこと、本件犯行後、被告人の夫もかなり収入が増加し、夫の両親も被告人とともに内職をして家計を助けることにより、家庭生活もようやく安定するに至り、夫とその両親は、被告人の今後の行動を監督し、過誤に陥らないようにすることを誓うとともに、子供が被告人を慕つており、子供と被告人とを引き離さないことを熱望していることが認められるので、このように家族との共同生活ができる事情の下では、被告人を補導処分に付するよりも、被告人を再度の執行猶予に付するとともに、その期間保護観察に付することによつて、被告人の自粛自戒及び家族の保護監督と相俟つて、被告人の更生を期する方が相当であると考えられるのである。それ故、論旨は理由がある。

よつて、刑事訴訟法第三百九十七条第一項、第三百八十一条に則り原判決を破棄するが、当裁判所は、訴訟記録並びに原審及び当審で取り調べた証拠によつて直ちに判決することができるものと認めるので、同法第四百条但書によつて、本件について更に判決することとする。

当裁判所の認定した犯罪事実、証拠の標目及び法令の適用は法令適用の部において、売春防止法第十七条第一項に従い被告人を補導処分に付するとの部分を削り、刑法第二十五条ノ二を追加し、被告人を二年間の執行猶予の期間中保護観察に付することとするほか、原判決と同一であるからこれを引用する。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 下村三郎 高野重秋 真野英一)

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